はじめに
2025年、すき家で起きた「ネズミ混入事件」が世間を騒がせました。
SNSでは「気持ち悪い」「もう行けない」といった声があふれ、すき家は全国店舗を一時休業するという大規模な対応に踏み切りました。
でもこの事件、実は食品業界にいる私たちからすると「驚き」よりも「明日は我が身」と感じさせられるものでした。
この記事では、食品工場で実際に働いている筆者の立場から、
- 異物混入はなぜ起こるのか?
- 実際に現場ではどんな対策をしているのか? をリアルにお伝えします。
すき家(すきや)は、ゼンショーホールディングス傘下の牛丼チェーン店です。日本国内店舗数最多に加え、売り上げは吉野家の倍あります。
ゼンショーホールディングスと聞くと馴染みが少ない人がいるかもしれませんが、すき家のほかに、なか卯・はま寿司・ジョリーパスタ・ビッグボーイ、最近ではロッテリアを傘下にするなど、幅広く展開しています。
1. すき家のネズミ混入事件、ゴキブリ?企業の対策は?
- 鳥取県のすき家店舗で、みそ汁にネズミの死骸が入っていた
- さらに東京都内の別店舗では、テイクアウト弁当にゴキブリの混入も報告
- この影響を受け、すき家は3月末〜4月初めにかけて全国約2000店を一時閉店し、衛生見直しを実施
ここまで大規模な対応をした企業は珍しく、「異物混入問題」に対する企業の本気度が問われました。
2. ねずみの異物混入はなぜ起こるのか?
『ねずみ』という観点からお話しします。
① ねずみは侵入できるのか?
- お客様がドアを開けて入ってくるときに、ネズミが一緒に入ってくる危険性
➡信じてもらえないですが、そういうものなのです。 - 裏口からゴミを捨てに行くときにドアを開けっ放しにする時などにはいってくる危険性
➡すぐ閉めても、開けた時点で侵入経路が出来ます。ゴミ庫が近かったり、近くに排水溝などの環境があれば、ねずみは必ずいます。 - 屋根裏、壁の小さな穴から入ってくる危険性
➡トムとジェリーみたいなイメージです。穴があればそこから入ってきます。
② 侵入経路を断つには?
- 入口を二重扉にすると侵入確率が下がります。
➡二重扉のお店は意外と身近にあります。ライトの光が多い店や山林や海のコンビニは二重扉になってます。 - 穴を徹底的にふさぐ
➡1cmの穴もダメです。 - 殺虫薬剤やトラップを置くなど、ネズミが嫌がる環境を作る
➡ネズミが店舗に侵入する前に対策することが大事
③ 対策が分かっているのに何故出来なかったのか?
- 5S(整理整頓清掃清潔習慣)は徹底されている。が、穴の補修などはオペレーションにない。
- 時間がない。業務に追われ、優先順位が低くなっている。
- お金がない。殺虫薬剤やトラップは私たちが思っているよりコストが高い。
- 単純に知識がない。
3. 店舗や工場に入っているねずみの種類を知る
混入は一番小さいハツカネズミでしょうか。
それぞれ大きさも住むところも特徴があります。
種類 | クマネズミ | ドブネズミ | ハツカネズミ |
---|---|---|---|
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性格 | ・弱気 / 臆病 ・警戒心が強い | ・強気 / 暴れん坊 ・警戒心が弱め | ・おとなしい ・警戒心が弱め |
運動能力・生態 | ・殺鼠剤が効かない「スーパーラット」が増えている・高いところが得意 ・寒さに弱い ・泳ぎは苦手 | ・人に咬みつくことも ・寒さに強い ・泳ぎが得意 ・高いところは苦手 | ・1センチ以下のすき間でも通り抜ける・身軽で素早い ・泳ぎが苦手 ・寒さに弱い ・ジャンプが得意 |
活動場所 | ・天井裏 ・屋根裏 ・上層階 ・狭い空間 ・ビル | ・水場(台所など) ・床下や下層階 ・ゴミ捨て場 ・下水道 ・公園 | ・物置や倉庫 ・山林付近の人家 ・田、草地、土手 |
巣の場所 | 天井裏、壁の中 | 土手、植え込み | すき間 |
フンのかたち | 6mm~10mm 細長い・不揃い・広範囲 | 10mm~20mm 均一・丸みがある | 4mm~7mm 平面的、尖っている |
フンの色 | 茶色または灰色 | こげ茶色または灰色 | 茶色 |
好む食物 | 種子・植物性のもの | 残飯、虫、草 | 農作物・穀物・虫 |
体長 | 14〜20cm前後 (紙幣の横幅くらい) | 18〜25cm前後 (A4用紙の短辺くらい) | 6〜10cm以下 (紙幣の縦幅くらい) |
体重 | 150~200g | 150~500g | 10~30g |
身体の色 | 背中:茶色・黄褐色 腹:明るい黄褐色 尾:黒 | 背中:茶色・灰色 腹:明るい灰色 尾:肌色 | 背中:茶色 腹:白・灰色 尾:肌色 |
尻尾 | 体より長い | 体より短い | 体より短い |
耳 | 大きい | 小さい | 大きい |
4. 「異物混入ゼロ」は理想。でも現場では…
正直に言えば、異物混入を100%ゼロにすることは出来ません!ごめんなさい!
ただ、100%に近づけることは出来ます!
しかし、「1件も発生させない」ために、現場では毎日細かいルールと対策を積み重ねています。
- 「今日は何か見落としていないか?」
- 「新人がルールをちゃんと守れているか?」
- 「いつもと違う動きはないか?」
こうした気配りと緊張感の上に、安全な食品が成り立っているのです。
5.筆者の感想
このニュースを聞いたときは、あるだろうな。世間に出ただけ。という印象です。
食品業界にいたら、『なにかが混入する』のが当たり前であり、どこまで阻止できるかというのがかなりの労力を使います。
ただ、異物混入する確率が高いという意味で、ネズミの混入は珍しいです。
ということは、
①吉野家の倍ある売り上げと利益を出してるすき家をおとしめるために、わざと混入させたのではないか?
②株価を一時的に下げて利益を得るために、わざと混入させたのではないか?
ということもありますよね。
真相は分かりません。